ネガティブな人ほど「遊戯王ZEXAL」を見てほしい理由
10年ぶりくらいにこういうブログを書きます。
今日で放送開始(2011年4月11日)から7年の「遊戯王ZEXAL(ゼアル)」が好きすぎて紹介したくなったためです。
読みづらい部分もあると思いますが、ゼアルってなんだよという人も、名前だけ知ってるという人も、もう見たという人も、私がゼアルを好きな理由を聞いてください。
●遊戯王ZEXALとは
漫画「遊戯王」のアニメ化作品である「遊戯王デュエルモンスターズ」から続くアニメシリーズの4作目で全146話*1のアニメです。
「ZEXAL(ゼアル)」とは情熱(ZEAL)がぶつかり合って(×)何倍にもなるということを表した造語だそうです。
シリーズの4作目ですが、シリーズ間の話のつながりはあまりないので他のシリーズは見てなくても平気です。
主人公のデュエルの腕がだんだん上達していくという話なので、最初はデュエルが簡単めでカードゲームが分からないという人もおすすめです。話が進むのに合わせてルールを覚えていけるところも良いです。
畠中祐さんと増田俊樹さんのアニメ声優デビュー作でもあるのでそこに注目しても楽しいと思います。
ストーリーやキャラの心情に左右されるデュエル展開、画面の美麗さ、世界観の元ネタがスピリチュアルとオカルトといううさん臭さ、最近のアニメとは思えないほど自由な作画、OP・EDに加筆しないと死ぬスタッフ、音楽…などたくさん好きな部分があるんですが、
ストーリーの構成がすごくいいと思うので、最初の2クール(1~25話)のストーリーを中心に解説していきたいなと思います。
●ゼアルのストーリーとテーマ
◯1話のあらすじ
未来のデュエル・チャンピオンを目指す九十九遊馬は、「かっとビング!」を合言葉に、自分の可能性を信じて何事にも挑み続ける元気な少年。しかし、肝心のデュエルの腕前は初心者レベルで、連敗記録のチャンピオンになりつつあった。
ある日、悪友・鉄男のデッキが学校一の不良・シャークに奪われてしまう。恐れず果敢に立ち向かう遊馬だったが、お守りとして大切にしていた「鍵」を壊された上に、全国大会レベルの腕前をもつシャークとデュエルで勝負することになってしまう!
強力なモンスターの召喚方法「エクシーズ召喚」を駆使するシャークを前に、遊馬は・・・!?
◯主人公・九十九遊馬くん
13歳。中学一年生。誰よりもデュエルが大好きだが、腕前はイマイチ…。
弱きを助け、悪を挫く熱血漢。早とちりも多いうっかりドジだが、失敗をおそれず、何事にも絶えずチャレンジし続ける少年!
冒険家の両親は小さい頃に行方不明になり、現在は姉の明里とお婆ちゃんの3人家族。
好物は、お婆ちゃんの作るデュエル飯*2!
口癖は「かっとビングだぜ!オレ!」
◯準主人公・アストラル
異世界からやってきた謎の生命体。
頭脳明晰でクールな性格。デュエルの天才。
遊馬と激突した衝撃で、彼の記憶は99枚の「ナンバーズ・カード」となって飛び散ってしまい、その目的は謎に包まれてしまう。
(公式サイトより)
未来の街ハートランドシティを舞台に、「かっとビング」魂の持ち主・遊馬と異次元から来た天才デュエリスト・アストラルのでこぼこコンビがお互いからいろんなことを学んで成長していくカードゲームアニメです。
コロコロのアニメかなんかか?という感じだし
ストーリーやキャラデザ、本編のテンションからは友情と努力で明るく元気に挑戦していく感じのアニメっぽいですが、あんまり明るいアニメではありません。
ストーリーが暗いという意味ではなく、なんか明るい人向けじゃないのです。
ゼアルが向いている人はどんな人かというと「家族や他人とわかり合えなくて傷ついた経験のある人」だと私は思います。
ゼアルが描いている大きなテーマは
人とわかり合うことを諦めてはいけないのはなぜか
失敗して大事なものを失う辛さを知っても挑戦し続けなければならないのはなぜか
だと思っているからです。
ゼアルの1~25話は
「遊馬とアストラルが失敗の怖さを知ること」
が描かれています。
勇気や才能のない人が一歩を踏み出してチャレンジすることで成功の喜びを知る話の逆です。
勇気ある人と才能のある人が失敗の怖さを知る話なのです。
次から大まかなストーリーを追って説明していきたいと思います。
(※ネタバレを含みます。)
●扉の契約
「この扉を開く者は新たなる力を得る。しかしその者は代償として一番大事なものを失う」
遊馬の夢に何度も現れる、崖の上にある大きな扉。
遊馬は扉が言う「一番大事なもの」にピンと来ていないようです。
この夢を見るシーンから1話は始まります。
●遊馬の自信
スケボー相手に走って学校まで競争したり、とび箱20段や素潜りなど、失敗を恐れず無謀なチャレンジを繰り返す遊馬。
遊馬はそれを「かっとビング」だと言います。
そんな失敗続きの遊馬を、幼馴染の小鳥ちゃんは心配しています。
「もう…ほんっとうにバカなんだから」
「チャレンジだよ、かっとび。『かっとビング』!」
「…って言っても、どれもできてないじゃない」
「わかってないなあ小鳥は…大事なのはかっとび続けること。諦めなきゃ、いつかたどり着けるかもしれない。何つったって、この鍵があるんだからさ!」
遊馬は行方不明になった両親が残してくれた「皇の鍵」を首からさげています。
「それって、冒険家だったお父さんとお母さんの形見なんでしょ?」
「あぁ。この鍵は、いろんな可能性の扉を開けられんだ」
「へぇ~、ほんとにそんな力があるの?」
「ないっ!!」
「ないの!?」
「でもこの鍵を持ってると、かっとべる気がするんだ!くぅ~っ、かっとビングだぜ!!」
(1話「かっとビングだぜ、オレ!!」)
そんな遊馬の一番のかっとビングはデュエル。デュエルのチャンピオンになるのが夢です。
みんながデュエルをしているのを見ていた遊馬と小鳥は、クラスメイトの鉄男がデュエルをしているのを見かけます。
対戦相手は学校一の不良で全国大会出場の経験もあるシャークこと神代凌牙くん。
鉄男はシャークたちに挑発され、自分のデッキを賭けたデュエルを挑まれていました。
鉄男をかばう遊馬。シャークとデュエルして鉄男のデッキを取り返すと言います。
デュエルチャンピオンを目指していると虚勢をはる遊馬に、シャークはデッキを返して欲しければ自分の一番大事なものを差し出すように言います。
遊馬は皇の鍵を見つめます。
それに気付いたシャークは鍵を奪うと、踏み砕いて捨ててしまいます。
遊馬は鍵を壊されてしまった上に、鉄男と自分のデッキを賭けたデュエルをしなくてはならなくなってしまいました。
鍵を壊されて、遊馬はいつものようなかっとビングができないほどへこみます。
可能性の扉を開けてくれるような力はないと自分で言うにもかかわらずです。
シャークとのデュエルを控えて悩み続ける遊馬を、鉄男が止めようとします。
「オレに一勝もできないお前が、シャークに勝てるわけないだろ!?それに、もともとオレのせいだ…借りなんて作りたくねぇ」
「勘違いするなよ。オレはお前のために行くんじゃない。目の前で、大事なものを壊されたんだ。それで引き下がるなんて、父ちゃん母ちゃんならきっと逃げない!オレはオレのために闘うんだ!」
(1話「かっとビングだぜ、オレ!!」)
遊馬の自信はいなくなった両親(特に遊馬にデッキと鍵を残し、「かっとビング」を教えてくれた父親)の存在に支えられているのです。
●アストラルとナンバーズの力
ついにやってきたシャークとのデュエル。
必死にデュエルする遊馬ですが、全国大会レベルの実力を持つシャークには敵いません。
そんな絶体絶命の遊馬の前に夢の扉が現れ、扉を開けると、デュエリストの幽霊(?)アストラルが現れました。
開けた人に力くれるとか言ったのになんかシャークがパワーアップしてしまいました。
アストラルはこの世界に来るとき遊馬とぶつかったショックで記憶が「ナンバーズ」という99枚のカードになってバラバラになってしまい、
そのうちの一枚がシャークに乗り移ってしまったのです。
デュエルの腕も性格も正反対な遊馬とアストラルはまったく息が合いませんが、
アストラルは遊馬のライフポイントが削られるほど身体が透けていきます。
デュエルに負け、ナンバーズを奪われるとこの世界から消滅してしまうと言うのです。
遊馬はアストラルの力を借りてなんとかナンバーズの一枚「No.39 希望皇ホープ」を召喚し、遊馬が閃いたコンボによってシャークに勝利します。
遊馬とアストラルは行動を共にし、アストラルの記憶を取り戻すために散らばったナンバーズを集め始めます。
●遊馬が失うもの
遊馬はアストラルと共にデュエルをするようになり、ナンバーズを賭けたデュエルでの負けはアストラルの消滅に繋がることになります。
「完璧な人間なんているかよ!失敗するから面白いんだろ!?」
『失敗すれば、多くのものを失う』
「……(間)はっ!失敗にビビッてかっとビングができるかってんだ!幽霊なんかには一生わかんねーよ!」
(3話「トドのつまり事件です!」)
遊馬がいままで失敗を恐れずに挑戦することができたのは失敗をしても失うものがなかったからと言ってもいいでしょう。
デュエルの腕が最悪だった遊馬は、アストラルと出会ってからシャークなどの強敵にデュエルで勝つことができるようになり、周りの人から怪しまれだします。
もちろん遊馬の力で勝つことができたデュエルもありましたが、実際ナンバーズやアストラルの指示がなければ勝てなかったデュエルもあり、遊馬の力だけで勝てているとはとても言えない状態です。
10話ではクラスメイトの等々力委員長にそのことを指摘され、それに腹を立てた遊馬は
ナンバーズを使わずに(アストラルの力なしで)シャークに勝てたら自分の実力は本物であることを証明できる
ともう一度シャークとデュエルをしに行きます。
シャークは学校に居場所を失い、さらにヤバそうな不良たちとつるんでいました。
遊馬に負けてからデュエルをやめたというシャーク。
↑初めての本社回なので急に絵が濃い
遊馬はシャークをしつこく追い回し、自分が勝ったら不良グループから抜ける、自分が負けたら皇の鍵を渡すという条件をつけデュエルを挑みますが、
負けるかもしれないという不安からナンバーズを使ってしまいます。
しかし、シャークはナンバーズへの対策をしてきていました。
遊馬はナンバーズを使わないという約束を破った上にぼろ負けしてしまいます。
遊馬は失敗を恐れずに無謀な挑戦ができるというキャラクターではなくなってしまいました。
●シャークが失ったもの
シャークに一度デュエルを断られたあと、帰り路でアストラルが遊馬に尋ねます。
『遊馬。なぜ彼はデュエルをやめたのだ』
「……。そう…なんであいつデュエルをやめたんだろ…」
「それはおまえに負けたからだろ?」
「どうしてオレに負けてデュエルをやめちまうんだよ…」
「負けて失うもんもあるんだよ…」
「負けて失うもの?」
「そういえばシャークのやつ、グレ始めたのはデュエルの全国大会に出たときって話を聞いたけど、そのときにも何かあったのかもしんねぇなぁ」
(10話「逆襲のシャーク!」)
シャークは遊馬に負けて居場所を失っただけではなく、過去にズルをして失敗して大事なものを失ったことがあるキャラクターです。
全国大会で負けるかもしれないというプレッシャーからズルをして、表舞台でデュエルができなくなってしまったのです。
「違う!!オレはシャークのために行くんじゃない。オレ自身のために行くんだ!オレは自分に嘘をついた。シャークを抜けさせるためだとか言って、本当は勝ちたかった!!ただ勝ちたいからナンバーズを使ったんだ…。オレ嫌なんだよ!このまま終わっちまうの!!」
(11話「遊馬とシャーク 傷だらけのタッグデュエル」)
遊馬はシャークに負けるかもしれないプレッシャーから、ナンバーズを使わないという約束を破りました。
シャークはその姿に呆れ、デュエルの後そのまま立ち去ってしまいます。
遊馬は皇の鍵を奪われずに済みましたが、嘘をついたことで友達の鉄男や等々力委員長を失望させてしまいました。
遊馬がデュエルを通じてシャークと同じ気持ちになれたことが、シャークとの和解に繋がります。
●アストラルが知ること
13話ではナンバーズハンターの天城カイトが現れます。
この人が頭おかしい上に作中最強クラスに強いんですが、
弟のハルトの病気の治療のためにナンバーズを集めており、ナンバーズを持っている人の魂を引っこ抜いて魂ごとナンバーズを奪ってしまいます。
遊馬はナンバーズを持っているのでまあデュエルを挑まれます。
負ければ遊馬は魂を抜かれ、アストラルは消滅してしまうという命がけのデュエルです。
「お前だって…このデュエル負けたら消えちまうんだろ!?」
『そうだ。今回は君と条件が同じだ』
「…お前、怖くないのかよ!?」
『わからない…だが後には引けない。それが私の宿命だ』
(14話「『銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)』降臨!」)
自分の魂が賭かったデュエルを通じて、遊馬はアストラルが今まで命がけのデュエルをしてきたことを知り、協力して闘います。
そしてアストラルが逆転の一手を思いつきますが、
ほとんどぼろ負けします。
負けてしまうかもしれないという瞬間、デュエルの天才であるアストラルが初めてデュエルを諦めてしまいました。
アストラルはカイトに勝てるのかが分からず、しばらくスランプ状態(?)になってしまいます。
カイトのしもべを名乗るジンに仲間を人質に取られる17話では、アストラルは遊馬の仲間のことや、デュエル自体を諦めようとしてしまいます。
「何ビビッてんだ!小鳥たちを放っておけるかよ!」
『だが君は、カイトに勝てるのか』
「ぐっ!」
『彼の戦略…彼の力。私はあのデュエルで身をもって知った。いまの私たちに勝てる保証はない』
「じゃあお前は!100%勝てるやつとしかデュエルしないのかよ!?」
『そうだ』
「え!?」
『デュエルとは、私にとって生きる意味そのもの。負けると分かっている相手と戦うなど愚かな行為だ』
「てんめぇ…!」
『残念だが、君の友人のことは諦めるしかないようだ』
(17話「すべてを見通す者 恐怖の占い師・ジン」)
「私も…君と共に消滅しよう。サレンダー*3するんだ」
『…ふざけんじゃねぇ!』
「遊馬…」
「オレはデュエルでたくさんのやつと出会ってきた…そりゃ負けることもあったけど…だけど、いっしょにデュエルをやったやつは、みんなオレの大事な仲間なんだ!そんな仲間を、オレはただのひとりだって見捨てることはできねぇ!」
『遊馬、だからこそ私は…』
「まだわからねぇのかよ!お前はオレの大切な仲間なんだよ!アストラル!!」
(18話「カオスエクシーズ・チェンジ!希望の光ホープ・レイ!!」)
『仲間がいれば、希望を信じることができる。…ありがとう、遊馬。私を仲間と認めてくれて』
(18話「カオスエクシーズ・チェンジ!希望の光ホープ・レイ!!」)
アストラルはいままで、自分のためだけに闘ってきました。
アストラルは自身の記憶であるナンバーズを集めるためにデュエルをしているだけではなく、デュエルで負けることが自身の消滅と結びついています。
そのためアストラルは、遊馬の仲間たちを見捨ててでも、勝てない相手とのデュエルを避けることが正しいと考えていました。
仲間の命がかかったデュエルを通じ、遊馬が仲間のために闘っていることをアストラルは知ります。
遊馬が仲間を助けたいという想い、そしてその助けたい仲間の中に自分も入っていることをアストラルは知り、遊馬たちを仲間と認めました。
遊馬や仲間を大事に想うことを知ったアストラルは、同時に大事なものを失うことの怖さも知ることになります。
二度目のカイトとの対峙では、負けてしまうかもしれないという瞬間にアストラルは遊馬と別れることを惜しみ、涙を流します。
自分が消えてしまうかもしれないデュエルを怖いかどうかわからないと言ったアストラルが、負けることを怖いと思うようになりました。
●カイトが失ったもの
「人は大事なものを守るために何かを常に捨てる…私がこの世界を守るために人間を捨てたように。カイトもハルトを守るために人間を捨てたのだ」
(13話「魂を狩る者!ナンバーズ・ハンター現る!」)
「カイト…どうしてお前がナンバーズなんて集めてんだよ!?なんで悪魔の手先みたいなこと…おいカイト!」
「オレは弟のために悪魔に魂を売った」
(24話「魂のエクシーズ召喚!ZEXAL」)
シャークが失敗して大事なものを失ったキャラクターであるように、
カイトは力を得るために大事なものを失ったキャラクターです。
弟を守るために人の魂を狩り続け、感情を表に出さず弟以外の他人に対して心を閉ざしています。
カイトは本編の終盤まで、扉の契約である力の代償を表す重要な役割を持ったキャラクターであると思っています。
カイトとの和解はもっと先の話までかかります。
●遊馬が諦めないこと
アストラルやシャークなど、デュエルを通じてわかり合い仲間になれた人がいる一方で、
デュエルに敗北して大事なものを失いかけたり、アストラルとともに命がけのデュエルを経験して、遊馬は自分にとってのデュエルとは何なのかを考えていたとアストラルに話します。
「お前と出会ってから、いつも負け続けてたオレが強敵にも勝てるようになった。そして、シャークやカイトとデュエルしたときは、負けて失うものがあるってことも初めてわかった。
でも、どんなときだってデュエルを嫌いにはならなかった。そうなんだよ…オレにとってデュエルは勝ちも負けも関係ない。それは…うまく言えないけど…。オレにとってデュエルは、繋がりなんだ」
『繋がり…』
「あぁ。オレはデュエルするみんなと繋がっていたい。そこに勝ちも負けもない…。デュエルすることと、勝負は別なんだ」
『デュエルと勝負は別…。だが負ければ私は消滅する。君の考えは受け入れがたい…』
「お前の気持ちはよく分かる!お前を救うためなら、何だってするさ!
でも…オレ分かったんだ。デュエルには、勝ち負けを越えたものがある。その先に、勝ち負けよりももっと大事なものがあるって…」
(26話「開幕!WDC(ワールド・デュエル・カーニバル)」)
「デュエルとは私にとって生きる意味そのもの」であるとアストラルは言いました。
負けると消滅してしまうアストラルのデュエルは命がけです。しかも、ナンバーズを狙ってカイトがまたデュエルを挑んでくるかもしれません。
確実にデュエルに勝つことよりも、デュエルチャンピオンになるという夢を叶えることよりも大事なものがあると言う遊馬にアストラルは理解を示しません。
たくさんのデュエルをして遊馬とアストラルはどんどん仲良くなっていきますが、
遊馬が勝ち負けよりも人と繋がりわかり合うことを重視することにアストラルはずっと反対し続けます(たぶん124話とかそれくらいまで)。
『遊馬…君と私とは違うのだ』
「はぁ?何言ってんだ。そんなの当たり前じゃねぇか」
(17話「すべてを見通す者 恐怖の占い師・ジン」)
遊馬の他者肯定感は絶妙です。そこが好きな部分でもあります。
遊馬とアストラルは違う。考え方も性格も正反対だし、大事なものも違うのです。わかり合うまでに何度も衝突します。
でもそれは遊馬の言うように「そんなの当たり前」で、アストラルも遊馬の気質を「否定はしない」(46話)し「慣れてきた」と笑う(43話)。
ゼアルは人と人の違いを素晴らしいとか尊重すべきだと描いている作品ではないです。
考え方や大事なものが違うからわかり合えなかったり傷つけ合ったりする。
でも同じ気持ちになったり側にいることはできる。
遊馬が挑み続けるのはそこです。
●デュエルの中にあるもの
『デュエルは神聖な儀式だ。デュエリストなら、デュエルをすることで互いの気持ちがわかる』
(7話「正義の大盤振る舞い!エスパー・ロビン参上」)
「デュエルをすれば相手の全部がわかる!だろ?」
(10話「逆襲のシャーク!」)
「でも、オレはあいつの本当の気持ちが知りてぇ。 本当のデュエルがやりてぇんだ。デュエルをすれば相手の全部がわかるって言ったの、お前のはずだぜ!」
(47話「遊馬が棄権!?奪われた『かっとビング!』」)
「デュエルをすれば相手の全部がわかる」というアストラルの考えを、遊馬は大事にします。
これは原作の高橋先生の考えが元で、キャラクターが使うカードはキャラクターの心を表すというものです。
キャラクターが闘いに込める想いを一枚一枚選んでデッキにする。
正々堂々としたキャラクターなら正々堂々としたデュエルをするし、卑怯なキャラクターは卑怯なデュエルをする。
キャラクターの気持ちがデュエルの中に現れます。
遊馬とアストラルは、デュエルを通じてさまざまな気持ちを持った人とぶつかっていきます。
簡単にわかり合える人ばかりではないし、時には遊馬が受け入れられない考えを持った人や、遊馬のことを受け入れられずに攻撃してくる人とも遊馬はデュエルで繋がっていかなければなりません。
それが3クール目から顕著になってきて、33話からトロン一家が本格的に活躍し始めると、作品の雰囲気が少し変わります。
↑ふざけてんのかってくらい似てないけどちゃんと家族です
トロン一家は復讐というひとつの野望を持った組織にもかかわらず、ひとりひとりが家族や復讐に対して複雑な気持ちを持っています。
そしてトロン一家はデュエルで繋がっている関係でもあるのに、お互いの本当の気持ちを知らないのです。
(このギスギス感がリアルすぎてめちゃくちゃ暗くなります。)
私が特に気に入ってる話はトロン一家の三男IIIくんと遊馬のデュエルです。デュエルするのは47~49話ですが、42話からがこの話の前フリになっています。
遊馬とアストラルは失敗の恐怖と闘いながら挑戦をし続けます。
その姿は私にとって身近だし憧れでもあります。
遊馬たちがぶつかる困難には本当に厳しすぎないかという困難もありますが、そういうときにはデュエルで築いた繋がりが遊馬たちを助けてくれるのです。
私はそこに勇気を貰えます。
●おわりに
ものすごく長くなってしまって、ここまで読んでくれる人がいるのか不安なんですが、いたらありがとうございます。
現在ネット配信や再放送がなく、その上異常なほど長いので視聴しづらい作品ではあると思いますが、よかったら見てみてください。
みんなもかっとビング!!
●追記(2019年4月12日)
そういえばこんなの書いてたなぁと紹介してみたところ、ものすごくたくさんの人に読んでいただけて驚いています。
自分でも読み返してみて、なんかイマイチだなあと思った箇所(「アストラルが知ること」のまとめ部分)をごっそり書き直しました。
最初の2クール以降についての紹介は、私が何を書いても蛇足だと思うのでたぶん書かないと思います。
ストーリーも画もものすごく丁寧で良いアニメなので、気になるという人はぜひ視聴してほしいです。2019年の秋頃にネットで配信されるかも?と予想されていますがどうなんでしょうね?とりあえず、BOXや録画を持っている奇特なファンを探してみるのがいいと思います。